【DANCING IN THE RAIN】

 「かぁ〜っ!!」

 太陽を反射してキラキラ光る水面の側で、鈴鹿和馬は悔しさの混じった声をあげた。
折角来た当たりを、逃してしまった為である。

 「残念だったね…」
「あぁ、でも次は絶対に釣るゼ!!」
「うん、頑張ってね!!」

隣で微笑む少女の言葉に、鈴鹿は気合いを入れ直して、再び川へルアーを放った。


 今日、二人は息抜きとして川釣りへ来ていた。
勿論、誘ったのは鈴鹿である。
 最初、鈴鹿はバス釣りを考えていたのだが、“デートには不向きか?”なんて考えた末、渓流に落ち着いたのだった。
 少女を誘った時、彼女も挑戦してみたいと言ったので、鈴鹿は釣り竿を貸して、あれこれとやり方を教える事になった。
少女は飲み込みが早くセンスも悪く無い為、鈴鹿のレクチャーを受けて最初は悪戦苦闘していたが、短時間でなかなか様になっていた。
 しかし、本日の釣果は二人合わせて今の所ゼロだった。



 「和くん、そろそろお昼にする?」
「ん?…もうそんな時間か?」

釣りに熱中していた鈴鹿が腕時計を見ると、時刻は既に十二時を過ぎており、空を見上げれば陽は高く上がっていた。

「そうだな、飯にすっか」
「うん!」

二人は釣り竿をその場に下ろし、側に広げてあったシートへと移動した。


 少女は今日の為に作ってきたお弁当を手際良く広げ、鈴鹿に箸と麦茶を渡した。
鈴鹿はそれを受け取ると、手を合わせてから弁当に手を付けた。

 「……どう?」

弁当を黙々と口に運ぶ鈴鹿に、少女は不安げな表情で感想を求めた。

 「……ん?美味いぜ」
「本当?!」
「あぁ、お前良い嫁さんになるな」
「……ふぇっ?」
「……!!?……いやっ…そのっ…なぁっ……?!!!」

 鈴鹿の言葉に少女は、一瞬言葉を失い頬を紅潮させ、そんな彼女の反応に鈴鹿まで顔が赤くなり、照れ隠しの為に口の中にお弁当をかき込んだ。



 昼食の後片付けをして、魚へ再戦を挑もうとした時、ポツポツと頬に当たる感触に釣り竿を手にした二人が空を見上げると、それより少し遅れて、沢山の雫が二人に降り注いだ。

 「きゃっ!!」
「…マジかよ?!」

 空は明るいのに、ザーッと云う音と共に雨足が強くなってくる。
 二人は、雨宿り出来る場所が無いか見回し、急いで近くに有った木陰に駆け込んだ。


 「ほらよ…」

木陰では完全に雨を防ぎきれず、鈴鹿は自分の上着を少女の頭の上に被せた。

 「和くん…?」
「一応…被っとけよ……無いよりゃマシだろ?」
「でもっ…和くんが……」
「俺?俺は何ともねぇから気にすんな。通り雨みたいだしよ…直ぐに上がるさ」
「和くん……」

雨に打たれながら笑う鈴鹿を見て、少女は被せられた上着を差し出した。

 「…?」
「……一緒にはいろ?」
「馬鹿野郎っ!!…俺はいいって言ってるだろ?!」
「ダメだよっ!!風邪ひいちゃうよぉ…」
「…分かったよ」

 瞳を潤ませて自分の事を見上げる少女には勝てず、鈴鹿はその場にしゃがんだ。
すると少女は、彼にピッタリと寄り添って、頭の上に上着の半分を被せた。


 「…今日は悪かったな……」

雨の降り続ける空を見上げながら、鈴鹿はポツリと呟いた。

 「…え?」
「釣果はボウズだし…雨には当たっちまうしよ……」
「うぅん。謝らなくていいよ!私は凄く楽しかったもん!!釣り教えて貰えたし、お弁当も喜んで貰えたし…」

それから、それからと、楽しかった理由を探す少女を見て、鈴鹿は「有難な…」と微笑んだ。



 「…上がったか?」
「…うん。みたいだね」

二人は木陰から出て、雨の上がり太陽の覗く空を見上げた。

 「風邪ひいちまっても困るしよ、引き上げようぜ!」
「そうだね」

 二人で手分けして荷物をまとめていると、持って来ていた小さな空のバケツに水が溜り、光を反射していた。
そのバケツを見て、二人は顔を見合わせて笑った。

 「結局ボウズだったけど…ま、次が有るよな。また来ようぜ!!」
「うん!!次は絶対釣って帰ろうね!!」
「あぁ、当たり前だろ?!次はリベンジだぜ!!」



 二人は、手を繋いで渓流を後にした。
雨に濡れた手は少し冷たくなっていたけど、直ぐにお互いの体温で温かくなった。



 二人の向かう先の青空には、大きな虹が架かっていた―――





fin


設定としては、卒業後の釣りデートです。
渓流釣り…好きですよ。鈴鹿と一緒に釣りに行きたいですね。
鈴鹿は私の中でbQです(´∀`*)ウフフ
恋愛下手は大好物ですから!!(アフォ
鈴鹿はバスケスチと学園祭スチが好きですね。男らしいぜ☆


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