【花サク】

 桜が満開に咲き乱れ、心地良い春の風が頬に触れる。
二人が出会ったのも、桜の咲いた季節だった。

 二年前の四月上旬、園芸部の花壇で守村桜弥は少女と出会った。

 その少女と今日、桜吹雪の舞う並木道を歩いている。
いや、正確には『いた』のだ。
何故過去形かと云うと、花見客の酔っ払いに絡まれてしまった少女を、守村は有りっ丈の勇気を振り絞って庇った。
 しかし、助けたまでは良かったのだが、庇い終わった途端に気が抜けてしまい、そのまま気を失ってしまったのだった。
…だから『いた』なのである。



 「………くん」

「……弥くん」

「…桜弥くん!!」



 「……?!」

 遠くで自分を呼ぶその声で、守村は目を覚した。
守村が目を開けると、ギョッとする程近くに少女の顔があった。
それと同時に頭部の柔らかく温かい感触に気付き、自分の置かれて居る状況を把握した。

 「!!!」

 守村は慌てて体を起こし、体制を立て直して周りを見ると、其処は森林公園のベンチの一角で有る事が分かった。
 陽がすっかり傾いて、空と辺りはオレンジ色に染まっている事にも……

 「僕は…一体…?」
「良かったぁ…」

意識の戻った守村に、少女は安堵の表情を見せた。
そして、何が有ったのかを話はじめた。

 ―…守村が気絶してしまった後、少女は彼が自分から庇ってくれた相手に頼んで此処まで運んで貰い、一時自分の鞄を枕にしてハンカチを濡らした後、自分の膝を枕に変えて守村が目を覚すのを待っていたとの事だった。


 (…情けないなぁ…頑張って彼女を庇ったって、僕は逆に彼女に迷惑を掛けてしまった…。しかも、こんな僕の為に長時間膝を貸してくれていたなんて……)


 嬉しいやら、情けないやらで守村は溜息を吐いた。

 「…ごめんなさい。折角誘って頂いたのに、僕は貴女に迷惑を…」
「うぅん、いいの。…だって、桜弥くん私を守ってくれたでしょ?」
「えぇ、まぁ…」
「私、凄く嬉しかったから…だから、そのお礼。こんな事でしか、お返し出来ないけど……」

少女が照れながら微笑むのを見て、守村は俯いて苦笑した。

 「…ダメですね、僕は。一生懸命頑張って勇気を出したって、最終的には倒れてしまって……カッコ悪いですよね」

 彼は自分が本当に不甲斐無いと思った。
大好きな人でさえも満足に守る事が出来ないのか?と…――

 「…うぅん、そんな事無いよ!だって、桜弥くん…凄くカッコ良かったもん」
「……有難う。…そんな事を言ってくれるのは、○○さん…貴女だけです……」

守村は柔らかく微笑んで、少女にお礼を言った。
そんな彼を見て少女も微笑んだ。




 遠くでは宴の音が鳴っていた。
けど、此処は静かで…まるでこの一角だけ別世界の様に思えた。



 沈み行く夕日を背に、守村と少女の影が重なった―――




 「……」
「……」


ひとつになった影が離れると、二人は暫く見つめ合っていた。
そして、照れながら微笑み合った。


 二人とも桜色に頬を染めて……



 高校3年目の四月。
桜の季節に出会った二人は、満開の桜が見守る中でお互いの気持ちを確かめ合った。



 守村桜弥は、自分の名前に『桜』が入っている事に、少しだけ運命を感じた。






fin


スチルでXXX って設定のSS 第1弾目です。
守村のこの花見スチと秋桜スチは好きですね。
絶対なんか有ったから!!この時!!(アフォ
この子のお家にお招き頂くスチがナカナカ見れなくて困りました。。。


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